難聴の症状と原因
難聴の症状
文字通り自分で聴力低下を感じる場合と、自分ではあまり意識しないのですが検査をすると聞こえが悪くなっている場合があります。また耳鳴り、音が響く感じ、音が割れてしまう、耳が塞がる感じも聴力低下により生じる症状であります。
難聴の原因
難聴の原因には大きく分けると伝音性難聴と感音性難聴、さらにこれら両者を併せ持った混合性難聴に分けられます。
伝音性難聴は外耳、鼓膜、中耳の音を伝える仕組みが障害されて生じるものでこの場合は一般耳鼻咽喉科の先生がご専門となります。ここでは主に当院がみさせていただく感音性難聴を主体にお話しいたします。
感音性難聴は疾患の症状が発現する様式から急性感音性難聴と慢性感音性難聴にわかれます。一般的に急性、慢性の感音性難聴をきたす可能性がある疾患には以下のものが挙げられる。
外傷性:音響外傷、側頭骨骨折、外リンパ瘻など
腫瘍性:聴神経腫瘍(通常はいつとはなしに徐々に進行する感音性難聴)、錐体骨部腫瘍、転移性悪性腫瘍など
薬剤性:アミノ配糖体系抗生物質、ループ系利尿剤、抗癌剤など
感染 :髄膜炎、内耳梅毒、ウイルス(ムンプス、帯状疱疹、インフルエンザ、風疹、麻疹、EBウイルスなど)
血管障害:糖尿病、高血圧症、動脈硬化、慢性腎障害、肥満、喫煙などを危険因子とする脳血管障害、内耳血管障害など
全身性疾患:糖尿病、高血圧症、動脈硬化、血液透析、慢性腎障害、白血病、自己免疫疾患
遺伝性疾患、遺伝子異常による内耳障害
加齢性変化
難聴診療のポイント
感音性難聴のうち慢性、緩徐に進行するものは比較的改善は困難な場合が多いが、急性発症の感音性難聴は改善する可能性があるものがあります。このため難聴が「いつ」「どこで」「どういう状態で」「突然自覚するようになったのか」を知ることが大切となります。
また難聴感以外の自覚する症状であるめまい、音が響く感じ、耳鳴りの有無、いつ感じるようになったのかも大切になります。
さらに、難聴以外の既往歴、他の疾患の有無、喫煙、アルコール飲酒、職業、生活習慣、家族歴などは難聴の原因を知る上で非常に大切な情報となります。
そこで患者さまにはできる限りこのホームページにある問診票をみていただき、自分のめまいを落ち着いて思い出していただき、さらに診察の時にはどんなことを聞かれるのかを知っていただければ幸いです。
当院の難聴診療の特徴
急性感音性難聴に対する取り組みの特徴
一般的におこなわれている内服、点滴静注によるステロイドによる薬物療法。さらに血管拡張薬としてプロスタグランジン E1薬も内服、点滴静注をおこないます。ビタミン B12、内耳代謝促進薬(ATP)もおこないます。加えて当院ではストレスが関係する場合は安定剤、抗うつ薬も用います。星状神経節ブロック、高圧酸素療法については現在のところ有効性についてのエビデンスがないので当院では勧めておりません。
当院の特徴的な治療方法
ステロイド鼓室内注入法の併用治療
この方法は2019年のアメリカの学会での突発性難聴治療ガイドラインで急性期の救済治療として推薦されています。また本邦でも著明改善以上の効果ではステロイド全身投与52%、ステロイド鼓室内注入法と全身投与の併用群では77%の改善率を示す報告があります。さらに回復が不十分の場合、糖尿病を伴っている場合は中耳腔(鼓室内)ステロイド注入も検討いたします。
予後では発症後1週間以内に上記の適切な治療をおこなうことで約40%の人は完治し、50%の人には何らかの軽減がみられます。しかしながら治療開始が遅れれば遅れるほど完治が困難となります。さらにめまいを伴った場合、糖尿病を伴った場合、高音部の感音性難聴がみられる場合も完治が困難となる場合が多くみられます。
慢性の感音性難聴への積極的な対応
当院では日常生活の質の改善に重点を置いております。このため補聴器を積極的に活用することをおこないます。補聴器も勧めるだけではなく、積極的な聴覚のリハビリテーションが大切であると考えます。
せっかく購入した補聴器が使われずにもったいない経験をされておられる難聴の患者さまが多くみられます。これらはやはり計画的な補聴器を使ったきこえのリハビリテーションの必要性、さらに難聴疾患、補聴器に対する患者さまと治療をおこなうものとの認識のズレが原因となっていることを感じます。
そこで当院ではこの認識のズレを説明し、理解していただきながら補聴器導入を進めて、また様々な音場、様々な音声、速聴でのきこえのリハビリテーションを導入していきたいと考えております。
これらは、例え補聴器を使っていない難聴患者さまににもリハビリトレーニングによって日常生活の質の改善が見込まれます。