耳鳴りの症状と原因について

耳鳴りの症状

 耳鳴は成人の10%以上が自覚しているという一般的な疾患です。

 耳鳴には他覚的耳鳴と自覚的耳鳴があります。他覚的耳鳴は患者さん以外でもきくことができる耳鳴です。自覚的耳鳴は患者さんのみしかきくことができない耳鳴です。

 耳鳴りの音は人によって様々です。音の性質も「キーン」「ジー」「シーン」といった高い音から、「ゴー」「ボー」といった低い音まであり、それらの混じった場合もあります。音の大きさも非常に大きな音から比較的小さな音までこれまた様々です。またほとんどの耳鳴りは音の大きさも、音色も非常に変動しやすい特徴があります。朝と夜では全く違う音に感じたり、疲れ、寝不足、ストレス、不安があると調子が悪くなる特徴があります。

 さらに耳鳴りの苦痛から夜眠れなくなったり、集中力がなくなったりすることもあり、このことから二次的にうつ状態となったり、更なる疲れ、ストレスの原因となり悪循環に陥ります。

耳鳴りの原因

 耳鳴患者さんの約90%は自覚的耳鳴といって他の人には聞こえない耳鳴です。

 原因はまだ不明な点が多いのですが、聴力が低下したために聞こえてくる音と、脳で覚えている聴力が良かった時の音の情報との間にズレが生じるために、脳が足りなくなった音を補うために作り出すために生じる現象です。

 では生まれつききこえがわるい患者さんは耳鳴を感じるのでしょうか?答えは、耳鳴を感じません。なぜなら生まれつきにきこえが悪い方は、脳もきこえが悪い音の情報しか持っていないからです。

 高い音が聞こえなくなってしまった患者さんの耳鳴は、脳は足りなくなった高い音を補おうとするので、高い音の耳鳴、例えば「ピー」、「キーン」など、を作り出してしまいます。

 低い音がきこえなくなってしまった患者さんは「ゴー」、「ボー」といった低い音色の耳鳴を感じることが多いのです。

 耳鳴患者さんの約5%弱は他覚的耳鳴です。多くは血管の拍動音です。血管拍動音の場合は自分の脈拍と同じリズムで耳鳴を感じます。また音色も血管の雑音なので「ザーッ、ザーッ、」とか「ゴーッ、ゴーッ」といった音色です。

 原因となるのは総頚動脈という首の太い血管が内頚動脈(これは脳に向かう動脈です)と外頚動脈(これは頭蓋骨の外側の顔面、頭皮に向かう動脈です)が分岐するところが狭くなって
いる。外頚動脈のさらに末端の、耳介前方を走る浅側頭動脈が狭くなって音がする場合が多くみられます。

 その他、頭蓋内の脳の血管奇形、脳の動脈と静脈が直接つながっている動静脈瘻の場合が続いて考えられます。

 血管の拍動音以外には鼓膜のケイレンによって、鼓膜につながっている耳小骨が音を立てている場合も考えられます。

 またのどの奥の上咽頭、口蓋垂のケイレンや不随意運動によって音が生じる場合があります。この場合の音色は「コツ、コツ、コツ、、、」「カチ、カチ、カチ、、、」といった機械的な音で感じる場合があり、リズムは血管の拍動リズムよりも早いテンポです。

耳鳴り診療のポイント

 なんといっても的確な問診に尽きます。

 耳鳴り診療では耳鳴り症状をできる限る客観的に評価することが大切です。われわれの診察、問診の技量も問題があると思われますが、患者さまにもできる限り客観的にお伝えいただきたいと思います。

 例えば「急に耳鳴りが始まったの」とおっしゃった方でも「では、何月何日何時ごろまでくらいに急に耳鳴りが始まったのですか?」とお聞きすると「いえ、昨年の夏ごろからです。」とおっしゃった方がいらっしゃいました。また耳鳴りの音もできる限り詳しくお伝えいただくと上述のように耳鳴りの原因が明らかになる場合があります。また難聴感の有無も大切で、難聴感があればやはりいつ頃から感じておられるのか教えていただきたいのです。

 そこで患者さまにはできる限りこのホームページにある問診票をみていただき、自分の耳鳴りを落ち着いて思い出していただき、さらに診察の時にはどんなことを聞かれるのかを知っていただければ幸いです。

当院の耳鳴り診療の特徴

 「耳鳴りなんて治らない」と言われる肩を多くみます。確かに耳鳴りがゼロになることはやはり困難と思います。しかし軽減、緩和はできる症状です。

 耳鳴りのほとんどは他の人には聞こえないものです。それだけに他の人には理解していただけないストレス、苦痛、不安があります。当院では他人には理解してもらえない耳鳴りをできる限り客観的に捉えるようにしております。

 まずいくつかの質問票によって耳鳴の問題点、耳鳴りの苦痛、ストレスの度合を評価します。

 次に病態、病巣を調べる検査として、純音聴力検査、耳鳴検査をおこないます。耳鳴、難聴の原因として内耳ではなく、より脳に近い聴神経、脳での聴覚の伝わる通り道に異常が考えられる場合は聴覚の脳波(ABR)検査をおこない、場合によってはMRI検査をおこなって聴神経腫瘍、小さな脳梗塞、聴神経に対して脳の血管が圧迫するような神経血管圧迫症候群の存在確認する場合があります。

 他覚的耳鳴で血管雑音による耳鳴は聴診器できこえる場合もあり、その上でMRI, MRA検査、頸部血管超音波検査を依頼し原因となる血管の部位、狭くなっている程度を調べます。鼓膜のケイレン、のどの奥の上咽頭、口蓋垂のケイレンや不随意運動によって音が生じる場合には視診が大切です。のどの奥の動きの異常、ケイレンについても神経の走行に腫瘍などの異常がないかどうかMRI検査をおこう場合があります。

 このように検査をした後に、患者様の状態、ご希望を考慮しながら以下のような治療を行っていきます。

内服薬治療

 脳を低下してしまった音の情報に適応させる目的と、脳の適応を促す目的で患者さまの状態、御希望をうかがって安定剤、安全な抗うつ薬を用います。

音響治療

 当院では耳鳴治療に積極的に音響治療を行いと考えております、補聴器を装用することで足りなくなった音を補うことができます。アメリカの治療ガイドラインでは耳鳴を伴う難聴がある場合は難聴の程度にかかわらず補聴器による評価を進めることが明記されています。音を補うことで半年、1年ほど補聴器を使用していると耳鳴が軽減する報告があります。

 また補聴器のみではなく快適感がある音楽や、環境音(滝が流れる音、海の波打際の音、
小川のせせらぎ音などを聞いていただいたり、部屋に流していただくことで快適な音が流
れることで脳は音を作り出すことを弱めることが考えられます。

耳鳴によって引き起こされる苦痛に対する治療

 睡眠障害、抑うつ状態、イライラ、耳鳴のストレスに対しておこなう治療です。相談し希望をうかがって睡眠導入薬、安定剤、安全な抗うつ薬内服薬治療をご希望によっておこないま
す。

 当院ではこのように耳鳴治療は通り一遍の治療ではなく、まさにオーダーメイドの治療が必要と考えております。是非ご相談ください。